室内環境のプロが教える! 目に見えない微生物の話 |納得!素晴らしき漆喰の世界-6 - 【公式】漆喰うま~くヌレール

室内環境のプロが教える!
目に見えない微生物の話 |納得!素晴らしき漆喰の世界-6

専門家に聞く 漆喰の世界 メイン画像
 

来客の前や、1年の終わりの大掃除など特別なタイミングでしか掃除をしない場所って、ありますよね?

本棚やクローゼットは、ふだんの掃除スポットから外れるため、手をかけない期間が長くなるほど目に見えない微生物が増えるといいます。

お部屋の中には、どのような微生物が存在するのでしょうか?

今回は、DIY子とともに、住宅内で引き起こされる微生物の特徴や、対策について教えてもらいました!

 
素晴らしき漆喰の世界 第6回 3コマ漫画
 

お部屋の三大微生物「細菌、カビ、ウイルス」はどこで増える?

一般的な住宅の中にみられる微生物といえば「細菌、カビ、ウイルス」の3つが挙げられます。

これらの微生物は、いったい家のどこに潜んでいるのでしょうか?

 

東京家政大学大学院 人間生活学総合研究科 非常勤講師で環境微生物学者の川上裕司先生は、微生物はいたるところに存在するといいます。

「目に見えない細菌やカビ、ウイルスは、室内のあらゆるところに存在しますが、彼らが好む条件というものがあります。大きく分けると、カビと細菌は、湿度が70%R.H.以上、ウイルスは湿度が40%以下で増加するスピードがアップします」と川上先生。

 

つまり、日本の夏場は、細菌やカビにとって増殖の条件がそろったゴールデンシーズン。逆に湿度が低く乾燥しがちな冬も、ウイルスが増えやすいので安心はできません。

たとえば食べ物だと、ビスケットなどの乾いたものよりも水分量の多いゼリーのほうが、細菌やカビの温床になるそう。湿度でみると、40~50%R.H.の範囲内が比較的細菌・真菌・ウイルスが繁殖しにくい室内環境といえます。

そのほか、空気が停滞する場所も要注意。換気や掃除がおろそかになりがちな棚やクローゼットは、そもそも空気が循環しにくい環境なので、微生物が居着く傾向にあります。



見えないだけで散らばっている?!お部屋の微生物対策

知らぬ間に増える微生物には、どのように対処すればよいのでしょうか?

巷には、抗菌作用のある洗浄剤やカビ取り剤が溢れていますが、潜んでいる微生物が何かわからない状態でやみくもに使っても効果はないと川上先生はいいます。

 

「どこのご家庭にもあるエアコンは、住宅の中でも汚染されやすい場所です。

理由は結露があるから。風の吹き出し口が冷えると、周囲の空気との温度差で結露が生じ、そこに微生物が発生していくんです」と川上先生。

 

最近のエアコンには、吹き出し口の結露を防止するような対策をされたものもありますが、完全に結露を予防するのは難しいかもしれません。エアコン内部のフィルターにも同様のリスクはあります。

また、長らく開かれてなかった書物にも要注意です。本棚の奥に鎮座する古い本をためしに開いてみてください。紙の表面に、茶色のシミのようなものがみられないでしょうか?

これは、耐乾性のコウジカビの代謝産物である酸が原因で生じる「フォクシング」と呼ばれるシミです。

貯留するハウスダストの中にいる耐乾性コウジカビが原因で発生するもの。このカビは、アレルギーの原因にもなるので、要注意です。

川上先生に聞くと、大切なのは“こまめな掃除”だといいます。

 

「カビの餌になるチリやホコリをこまめに除去して、空気が滞ることがないよう、よく風を通す。これにつきます。

チリやホコリは、掃除機の付属ノズルをうまく使い吸い込んでいくと、捲き上ることがありません」と川上先生。

 

でも毎日、すべての場所を掃除するのは大変ですよね。

おすすめは、ふだんの掃除に1ヶ所追加する“ちょい掃除”。3分ぐらいの短い時間で、ついでにササッと行う習慣をつけるとよいかもしれません。

微生物対策としてのちょい掃除を続けると、年末の大掃除も楽になりますし、室内環境の劣化も遅らせてくれるはず。

あとは、空気清浄機とサーキュレーターの2つを設置するのもおすすめ。室内全体の空気がまわるようサーキュレーターで促し、舞い上がったチリやホコリを空気清浄機で吸い込むようするとよいでしょう。

お部屋の湿度管理とともに、上記のテクニックを使い分け、微生物が根付きにくい環境を整えていきましょう。



漆喰壁の強アルカリ性や調湿性は、微生物の増加を抑える可能性がある

pH12の強アルカリ性を保つ漆喰壁は、そもそも、細菌やカビ、ウイルスが繁殖しにくい環境です。

また、漆喰壁は、湿度が高いときには湿気を吸い、乾燥しているときには湿気を吐き出すという調湿性能にも恵まれています。

そういった意味で漆喰壁は、夏場のカビや細菌の増殖や、冬場に持ち込んだウイルスの増加を抑えることができるかもしれません。

 

川上先生は、“予防”は重要なキーワードだと話します。

「微生物や害虫の被害にあったり、それらによるアレルギー症状が出てからでは対処に困難を極めることもあります。大切なのは、“駆除ではなく予防管理すること”。予防は、暮らしの質を上げる現代のテーマなのです」。

 

本日のまとめ

□細菌やカビは湿度70%R.H.以上 、ウイルスは湿度40%R.H.以下で増えることが多い
□こまめな掃除と、サーキュレーターや換気による空気の対流を起こすことで、微生物の増殖を抑えることができる
□強アルカリ性と調湿性を併せ持つ漆喰壁は、微生物の増加を抑えてくれる可能性がある

 

この記事について教えてくれたのは…
東京家政大学大学院人間生活学総合研究科非常勤講師
一般社団法人次亜塩素酸化学工業会付属技術研究センター長
川上 裕司 先生

博士(農学)。元㈱エフシージー総合研究所取締役部長。生活空間で発生する害虫や微生物に関する研究を続けるかたわら、抗菌や防カビ、防虫に関わる商品の検査、および製品への異物混入などの調査を行なっている。また、美術館におけるIPM(総合的有害生物管理)についても造詣が深く、箱根彫刻の森美術館をはじめ、全国各地の美術館の環境保全に尽力している。

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